部下の育成方法とチームの意識改革

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企業の成長スピードが速いときは、人材を育成するスピードが人材ニーズに追いつかないことがよくあります。やむなく「即戦力となる人材を中途採用して急場をしのぐ」ということを繰り返していくうちに、組織全体で「人を育てる」という文化や気風が希薄になってしまう…そのようなケースも少なくないようです。

しかし、企業の安定した継続的な成長には、「人材を育成する」という企業文化や組織的スキルは必要不可欠です。ヒューマンリソースを一方的に消費していけば人材の獲得に大きなコストがかかり続けますし、自社のビジョンやビジネスモデルを熟知した次世代の核となる人材は外部からは調達できないからです。

では、部下はどのように育てていけばいいのでしょうか。

ちきゅうメソッドでは、それには「チームの意識改革」が必要不可欠だと考えます。

CONTENTS

1. ――目標には「3つの指数」を掲げる
2. ――目標は、みんなで考えてリーダーが決める
3. ――自発的で自律的な部下を育てる5段階のステップ

1.目標には「3つの指数」を掲げる

部下を育てるためには、「目標を設定し、それを達成する」という小さな成功体験の積み重ねが重要です。

目標を達成したかどうかを測定するためには、具体的な指数(売上高・受注数など)を設定しましょう。具体的な数値が示されることで、目標達成の進捗率が自分にも見えるようになるからです。

しかし、実際には、部下が上司と1対1で仕事をするというシーンは限られているでしょう。上司や先輩・同僚からなるチームの一員として徐々に経験を積み、チームのなかでの自分の役割やミッションなどを理解しながら成長していくという姿が一般的ではないでしょうか。

また、ひとりの部下を育てればいいというのではなく、チーム全体の熟練度を高めながら個々のメンバーを育成しなくてはならないという状況に置かれるチームリーダー(もしくは小さな企業のトップ)も多いはずです。

このような状況で、部下を育てながらチームを改善していくためには、毎月、あるいは四半期単位などの短期的スパンで、チームと個人、それぞれに「3つの指数」からなる明確な短期目標を設定することが有効です。

指数は必ず3つでなくてはならないというわけではありませんが、売上達成率、見込顧客獲得目標達成率、新規獲得顧客数などのKPI(重要業績評価指標)を3つ程度設定することで、KPIの進捗状況を見ながら営業活動の見直しがしやすくなります。

2.目標は、みんなで考えてリーダーが決める

さて、一般的な企業では、これらの数値目標は経営陣とチームリーダーが協議して設定(あるいは経営陣が一方的に設定)してチームに課せられることが多いと思います。しかし、このような一方的な目標設定は、実はチーム力の強化や部下の育成にはあまり望ましくないようです。

というのは、「一方的に押しつけられた数的目標の達成」では、ひとりひとりが数字を「ノルマ=押しつけられた義務」と受け止めてしまい、「なぜこの目標を達成することが重要なのか」という意識付けが十分行われない可能性が高いからです。

ちきゅうメソッドでは、短期的・中期的な目標設定は、ワークショップなどの形式で「チームメンバーを巻き込んで」計画を立てることが望ましいと考えます。

しかし、チームメンバーに全面的に任せてしまっては、容易に達成できそうな目標を設定してしまう可能性があります。ここで重要なのがチームリーダーの役割です。

チームリーダーは、会社全体の組織をシステム図などを使って整理し、視覚化して、チームメンバーに「会社の現状のビッグピクチャー」を理解させます。

「いま、当社の状況はこのようになっている。このような状況下、我々のチームに求められているのはこのような働きである。それに応えるため、我々はどのような目標を設定するべきだろうか?」といった疑問をチームメンバーに投げかけ、自由な意見を求めます。

メンバーからはネガティブな意見も当然出るでしょうが、指摘が的確であれば、そうした意見にも耳を傾けるべきです。一方的にリーダーがメンバーの意見を押し切ったり、押しつぶしたりといったことはするべきではありません。それではメンバーを計画に巻き込んだことにはならないからです。

そして、ネガティブな指摘に対しては「では、その問題をどうしたら解決できるか?」といったアイディアを求め、ポジティブな議論に転じさせることも大切でしょう。

こうして、リーダーを含むメンバー全員が目標設定について協議することにより、個々のメンバーのなかで「なぜこのような目標が必要なのか」「なぜこの数字を達成しなくてはならないのか」という理解が進み、「数値に対する意識付け」が行われます。

また、それと並行して「誰が何をどこまでやるべきか?」という役割分担についてもイメージが湧き、「自分の働きが目標達成のどの部分に重要なのか」が見えてくるでしょう。

ただし、こうしたディスカッションでは総論の合意は得られても、個人の目標やKPIに落とし込むところまではなかなか難しいものです。リーダーはまとめの段階で「チーム全体の目標・KPI」と、「それを達成するための個々の目標・KPI」を設定し、メンバーに徹底しなくてはなりません。

なお、こうしたディスカッションでは、必ずしも全員一致で目標が設定できるとは限りません。

このため、リーダーは、あらかじめ「みんなの意見は最大限に取り入れるが、すべての意見を取り入れることは不可能なので、最終的には自分の裁量と権限で目標を決定する」ということを宣言し、チーム全員の同意を取り付けておく必要があります。

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3.自発的で自律的な部下を育てる5段階のステップ

部下に「数値に対する動機付け」をさせることに成功したら、次は部下ひとりひとりを段階的に成長させ、「チームの成長サイクル」を根付かせる必要があります。そのためには、以下の5段階のステップが有効です。

1.最初はスクリプトに沿ってトレーニングし、数値の伸び率を検証する

新人の場合、最初はスクリプト(仕事の手順書。業務マニュアル)に沿って特定の作業に慣れさせ、上達するという経験が必要です。何らかのKPIを設定し、達成率が伸びていく様子を本人に実感させるようにしましょう。

2.目標達成と成長のPDCAサイクルを回し、「成長」とはどういうことかを実感させる

スクリプトに沿った作業に習熟し、一定の戦力になってきたら、「できること・任せられること」を少しずつ増やしていきます。

また、「この業務ができるようになるためには、どういったスキルが必要か?」「なぜこのようなミスが発生したのか?」「突き当たっている壁を破るためにはどうすればいいか?」という課題を自分で考えさせ、仮説と検証による自己成長のためのPDCAサイクルを回すことにも慣れてもらう必要があります。

PDCAサイクルを自分で回せるようになるには、それなりの経験が必要です。最初は上司や先輩からの直接指導でケーススタディを積ませ、コツを覚えてもらいましょう。

3.1か月単位で自分の仕事を振り返らせる

人間は、「自分が成長している」という日々のゆっくりした進歩をなかなか実感しにくい生き物です。このため、新人~若手の教育過程では、半期に1回くらいのペースで、「1か月単位の自分の成長状況を検証する」といった方法が有効でしょう。

上司や先輩が本人を交えて、過去のKPIデータをもとに「最初の1か月はこうで、3か月目にはこうなっていて、6か月後の現在ではここまで任せられるようになった。着実に成長しているな」といったことを振り返っていけば、本人にも「成長の小さな成功体験」が積み重なっていることが実感しやすいでしょう。

4.権限を委譲し、自律的に仕事をさせ、リーダー経験をさせる

ある程度力量がついてきた部下には「この案件は任せるから自分の思うようにやってみろ」といった思い切った権限委譲が必要です。もちろん進捗状況は上司が把握しておく必要がありますが、「ああしろこうしろ」といった具体的な指示は極力避け、最小限のアドバイスや注意だけにとどめましょう。「仕事を任された」という思いが部下に自信をつけさせ、責任感や自覚が生まれます。

また、後輩の指導役を任せたり、小さなプロジェクトのリーダーを経験させてみたりといった「上に立つ経験」も徐々に積ませていく必要があるでしょう。

5.「成長のサイクル」を文化として根付かせる

新人に対して1~4までのサイクルを繰り返していくことで、チームには「成長のサイクル」が生まれます。

自分が新人だった頃、若手だった頃、中堅になった頃の経験を持つ部下は、自分がリーダーになっても、同じように部下を段階的に育てることができるようになるでしょう。

そして、「仕事ができるようになれば、責任ある仕事が任せてもらえるようになる」という先輩の姿を見ることが新人や若手のモチベーションアップにもつながるはずです。

こうした「成長のサイクル」を企業文化としてチームに根付かせ、チームを継続的に活性化することが、リーダーに求められる真の役割ではないでしょうか。

欲をいえば、こうした5段階のステップを、段階別に業務マニュアルとして明文化し、企業文化として蓄積していきたいものです。ひとつのチームの成功体験に基づく業務マニュアルは、ほかのチームやほかの部門・部署にも幅広く応用がきき、企業全体の大きな財産となるのではないでしょうか。

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