新規事業は上手くいかないのが当たり前。現場に埋もれがちな問題解決の鍵を見つけるコツ【前編】

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INTERVIEW
伝説の
事業部長に
聞け!

PROFILE

酒井 雅弘(さかい・まさひろ)

営業支援サービスを提供する株式会社FUTUREWOODS 会長。1978年、日本リクルートセンター(現・リクルートホールディングス)入社。1988年、ファックス一斉配信サービス「FNX」事業責任者となる。2013年から3年間、株式会社ネクスウェイ取締役コミュニケーション事業部長を務める。
http://futurewoods.co.jp
CONTENTS

1. ――「青い鳥」はすぐ身近にいる
2. ――事業を正しく評価し、仕事に誇りを持つ
3. ――正解は現場に眠っている
4. ――どのボタンを押すかを決めるのがマネージメント
5. ――「課題のマッピング」を使って考えてみる

前編

現場に眠る正解を見つければ
行き詰まりを打破する道が見える

リクルート、そしてそこから分社化したネクスウェイと、ふたつの企業で事業のリーダーとして、また取締役として活躍した酒井雅弘氏。リクルートでは「伝説の営業マンに聞け!」に登場した小川さん、山本さん、小山さんらが所属した事業部を立ち上げるなど、数々の営業マンと事業を成長させてきた。その手腕を買われネクスウェイでも業績のV字回復を担った酒井氏に、行き詰まりを打破し、事業を伸ばすポイントを語っていただいた。

1.「青い鳥」はすぐ身近にいる

酒井さんはネクスウェイの設立時から監査役をされていて、その後取締役として事業に直接関わるようになったわけですが。

酒井

酒井

ネクスウェイのFNX(ファックス一斉配信サービス)は、僕にとってはリクルート時代からの可愛い子どものようなものでしたから、ずっと気にかけていたんです。ところがなかなか業績が上向かない。そこで「お願いだからやらせてくれ」と頼み込んで社内に入れてもらいました。

「うまくやれる」という確信というか、勝算はあったのですか?

酒井

酒井

いやあ、まったくありませんよ(笑)。確信も勝算もない。これで立て直しができなかったら、みっともないなぁ…と思いながら行ったんです。

ですから、うまくいかなかったら即クビ、うまくいっても結果が出て軌道に乗れば出ていくから…という話で。いずれにしても2年か3年だけのつもりで始めたんです。

当時、うまくいかない要因は社外からも見えていたのでしょうか?

酒井

酒井

いろいろありましたが、最大のものは「青い鳥症候群」です。幸福を呼ぶという青い鳥を求めて、兄妹は夢の中で旅に出ます。でも、鳥はどこにもいない。見つけたと思ったら、すぐに色が変わってしまったりする。夢から醒めた2人はがっかりしますが、彼らの家で飼っていた鳥の羽が、気づかないうちに青々としている。これこそが探していた鳥だったんだ、と2人は初めて気づきます。

そこにない何かを探し続けてきたけれど、実はそれは手の届くところにあった、というお話ですね。当時のネクスウェイがそういう状態だったと?

酒井

酒井

ネットが爆発的に普及して、誰もがメールを使うようになった。ファックスの先行きは怪しい。そんな状況でしたから、新しい事業を探してきては手を付けて、うまくいかず…ということを、ずいぶん長い間やっていました。

ですが、ただやみくもに新しい何かを探したところで、それがモノになるのかどうかも判りません。それよりも身近なところ、本業に立ち返るところからやるべきだと考えていました。

まず本業であるFNXをしっかりと固めていくことが重要、ということですか。

酒井

酒井

そうです。ネクスウェイの基幹事業であるFNXは僕自身、良い商品だと思っています。減ったとはいえ、ずっと使い続けてくださってるお客様もいる。ということは、それだけの価値があるものなんです。ですから、まずはそれをしっかりとやっていく。足元を固めていくことを考えました。

 

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2.事業を正しく評価し、仕事に誇りを持つ

具体的には、どのような方法をとられたのですか?

酒井

酒井

まずは事実を見て、正当に評価することです。過大評価も過小評価も良くない。確かにメールの普及でFNXは打撃を受けた。受注件数も減った。じゃあ、それがどれくらい減ったのかを見てみる。すると確かに一時期大きく減少しているんですが、それがある程度のラインで下げ止まっているんです。なら、このくらいのボリュームは確保できるんだということになります。こうした現実を、まず具体的にちゃんと見ようよ、というところから始めました。

同時に、誰もが本業に対する誇りを持てるように変えていこう、とも考えていました。

それは号令をかけてできることではないですから、難しいですね。

酒井

酒井

その通りですよ。でも、「もうこの事業はダメだろう」なんて気持ちで仕事をしていて、良い結果が出るわけがありません。僕らはこのサービスを売ることで給料をいただいているのだから、簡単に諦めてしまってはいけない。それに誇りや愛情があれば、なんとかしようと考えますし、そうなればアイデアも出てくるんです。会社のムード、空気を変えていこうとしたんです。

  

3.正解は現場に眠っている

酒井

酒井

実は僕が入る直前まで、営業リーダーたちがいろいろなワークをやっていて、僕も顧問として関わっていたんです。その頃の彼らはいろいろな不満を抱えていました。これでは仕事に誇りを持つことは難しい。そこで「何か指針になる標語のような、スローガンみたいなものを作ろう」ということになりました。そこでみんなで考えて生まれたのが「イキイキ稼ぐ」というものだった。

イキイキと働いて、しかもしっかり稼げたら、営業は元気になるでしょう。誇りを持って仕事ができます。

酒井

酒井

現場はずっと「イキイキ稼ぎたい」と思っていたんです。つまりそれこそが現場に活気を与える「正解」だった。ただ、こうした正解はすぐに見つかるものではありません。でもそれを見つけて掘り起こしてやれば、そこにはまさに問題解決の正解が眠っているんです。

現場に埋もれた正解を掘り起こし、「これでいこう!」という動きにつなげていくのは、マネージャーの仕事でしょう。

 

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正解に連なる、具体的な動きにしていく。

酒井

酒井

この件では「イキイキ稼ぐために何をするか」というところから考えた。そして「トラフィックで稼ごう」という指針を打ち立てました。ここで言うトラフィックというのは、ファックスとDMです。これを主軸として3年間頑張ってみたら、一定の業績を安定して残せるようになった。会社も社員も自信がついてきて、これからの経営方針はこれでいこう、というところまで行き着きました。

青い鳥症候群から脱して、揺るぎない指針を得たのですね。

  

4.どのボタンを押すかを決めるのがマネージメント

「現場で正解を見つけよう」という意識は、もともとお持ちだったのでしょうか?

酒井

酒井

それはありました。まず、会社からは以前から「増収させたい」という要望がありました。でもファックスでの収益は、いきなり増えることはない。「ならDM(ダイレクトメール)を売りにいこう」という方向に持っていこうとしたんだけれども、その頃は「DMはDM事業部が売るものだ」という意識が強かった。だからそこから変えていく必要があるし、それにはまず現場を見て、策を考えようと思ったんです。

先ほどの「誇りを持つ」という話にも通じますが、人の意識を動かしていくのは簡単ではありませんから…。

酒井

酒井

マネージメントという視点から見ると、こんなときに「どこのボタンを押すか」ということは重要ですね。現場の状況を理解したうえで、どこにどんな刺激を与えるか。そこを見きわめることは大事です。

それと、上が号令をかけて何かを始めても、それがやがて尻すぼみになってしまうと、現場の人間はゲンナリしてしまう。でも逆に「尻すぼみになんかさせない、これでやっていくぞ!」という強い意志を見せれば、現場は安心してついていけるし、力も出るんです。

  

5.「課題のマッピング」を使って考えてみる

事業を伸ばしたり現場の空気を動かしたり。そうしたさまざまなアイデアは、どのような思考から生まれるのでしょうか?

酒井

酒井

ひとつの事業なり会社なりが成長していくためには、必要な要素がたくさんあります。製品やサービスを良くすることは大切だし、そのためには開発パワーとコストが必要だったりする。経営者であればお金の心配もしなくちゃいけない。浅井さん自身、そうしたことはいつも考えているでしょう?

はい、確かにお金は大事な問題ですし(笑)、商品の魅力をどうやって伝えていくのかということも重要ですし…おっしゃる通り、いろいろなことをいつも考えています。

酒井

酒井

そうしたことを頭の中でマッピングしておくんです。「課題のマッピング」といえばいいのかな。そうしておくと、その事業全体を進めていくために、どの部分に注力すればいいかが見えてくる。また、どこがブレーキになっているのかも判ってくる。「ここが進まないから、事業全体が進まないんだ」というように。

あとは、外から入ってくるさまざまな情報…誰かのちょっとしたひと言や雑誌で見かけた情報でもいいんですが、それをマップに照らし合わせてみれば、正解を見つけることもできるんです。

僕の場合は頭では判っていても、なかなかうまくいかないこともあります。

酒井

酒井

それはありますよ。うまくいかないことの方が多いくらい。僕なんか、ネクスウェイにいた3年間のうち「勢い込んでやってみたまでは良かったが、まったくダメで頓挫してしまった」なんてことは何度もありますよ。それでもやるんです。結果がどうなるか、それはやってみないと判りませんから。

 

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聞き手:「ちきゅう」代表の浅井

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