マーケティングとセールスの関係性と違い

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モノやサービスを作り、売るという活動は、マーケティングとセールスの概念のもとで行われるものです。ですが、このふたつの概念の位置関係がねじれている企業が時おり見受けられます。マーケティングとセールス。それぞれのポジションと関係について、少し考えてみましょう。

CONTENTS

1. ――そもそも、マーケティングとは何なのか
2. ――目的と手段が連鎖する、ひと筋の流れ
3. ――階層を意識すれば、企業活動に芯ができる
4. ――悪しき「手段の目的化」を排除しよう
5. ――東京ディズニーランドの戦略に学ぶ
6. ――それぞれの位置関係を見直してみよう

1.そもそも、マーケティングとは何なのか

セールスとマーケティングとの関係を考える前に、まずはマーケティングというものを理解しておく必要があります。ですがマーケティングという言葉と概念に関しては、多くの誤解や認識不足が根強く残っているように感じます。
実際のところ「マーケティングとは何か?」という質問に対しては、さまざまな答が返ってきます。広告やプロモーションを行うこと。市場のニーズを調べて、それに応える商品を作ること。ブランドを構築すること。適切な販路で流通させること…。

 いずれもプロモーションの概念の中では大切なことですが、それらはマーケティングの一部であって、全体を表すものではありません。間違いではないけれども、決して正解とはいえないのです。
マーケティングについてしっかり語ろうとすると、それだけで一冊の本が書けてしまいますので、その内容について具体的にお話しするのは控えましょう。ですがいちばん大きなくくりで言うならば、マーケティングとは「何らかの価値を市場に提供し、その対価を得ること」、それに関する活動全般を指します。

 ですから、人々がどのような価値を求めているのかを調査することや、作り上げた価値を広く市場に知らせること、その価値を届けるためのルートを作ることなど、すべてマーケティングの範疇だといえます。
そしてこの価値を「どのように提供するか」という部分が、セールスの領分となります。つまりセールスは独立したものではなく、マーケティングの一部分だというわけです。
もうひとつ知っておいていただきたいのは「戦略の階層性」です。何やら漠然とした話のようですが、これを知っておくとマーケティングとセールスとの位置関係がよく理解できるでしょう。

2.目的と手段が連鎖する、ひと筋の流れ

企業のあらゆる活動には、戦略があります。
「別に戦略なんかないけど、仕事は順調に回っているよ」という企業もあるでしょう。むしろ、そうした企業が大多数かもしれません。ですが企業活動を戦略的にとらえると、いろいろなことが明確になってきます。

 例えば、企業にとって最大の目的は企業理念の実現です。「ちきゅう株式会社」の場合は「笑顔あふれる ちきゅう をつくる」という理念が、企業としての目的です。そのための手段として、例えば「CRMツール『ちきゅう』を活用して業績を上げる企業を、10万社つくる」という手段を掲げます。
つまり10万社に自社のツールを使ってもらい、それによって会社の業績を上げてもらおう、というわけです。ここまでが事業戦略です。

 すでにお気付きかもしれませんが、企業理念から発生した事業戦略のステップは、目的と手段が明確に、しかも上から下へという階層状に連なっています。
Aという目的を実現するためにBという手段を設定し、そのBを達成するためにCという方法をとる。企業ビジョンを最上位に置いたら、上位階層の手段をさらに下位階層の手段の目的として、順次つなげていく。そうしたひと筋の流れをつくるのです。

3.階層を意識すれば、企業活動に芯ができる

事業戦略の下には、マーケティング戦略があります。そこでは「どんな価値を・誰に・どのように届けるか」が検討され、その結果がそれぞれ目的として設定されます。
そして「どのように」の部分で「今期目標6万ユーザー、そのうちの4万を営業チャネルで獲得する」という手段が固まったなら、それを下階層に下ろして次の目的とします。そして、「今期4万ユーザーを獲得する」ことを目的としたセールス戦略を検討することになります。

 既存顧客のユーザー登録数を増やす。紹介による顧客増を狙う。まったくの新規開拓を行う。いくつかの目的を設定し、さらにそれらを達成するにはどうするかという方法を、それぞれ検討していきます。ここまでくると、かなり具体的な内容になってきます。
「新規のアポ取りに工数を取られているから、そこはアウトソースしよう」などという提案も出てくるでしょう。こうして、階層を下にたどるほど、目的も手段も具体化していくのです。

 まず企業の目的である理念と事業戦略があり、それを実現する手段としてマーケティング戦略があり、さらにそれを達成する手段であるセールス戦略がある。このようにとらえてみると、ほとんどの企業活動に一本の芯が通ります。

4.悪しき「手段の目的化」を排除しよう

ここまでの内容をひとことで表すと「上位階層の手段が、下位階層の目的となる」ということになります。それぞれの目的の上にはさらに上位の目的があり、それが最終的な企業理念にまでつながっているからです。
逆に好ましくないのは、言ってみれば「目的なき手段の目的化」でしょう。

 例えば、営業チャネルで「今期4万ユーザー獲得」という目的は、全社で「今期6万ユーザー獲得」という目的のための手段です。そして「今期6万ユーザー獲得」は「導入企業10万社」への途上の一里塚であり、さらに最終的な目標地点として「笑顔あふれる ちきゅう をつくる」というビジョンがあります。
こうした一連のつながりができていなかったり、上位の目的がはっきりしていなかったりすると、いわゆる「手段の目的化」が起こってしまいます。
「新規獲得○件」など、セールスの現場ではノルマや目標値が掲げられるものですが、その数字にさらなる上位の目的があるのかどうか。そこがあやふやでは現場の士気は上がりにくく、また「やらされている感」が蔓延するもとにもなります。

 マーケティングからつながる目的と手段の連鎖を意識したセールス戦略こそ、現場にとって必要なものなのです。

5.東京ディズニーランドの戦略に学ぶ

目的と手段の連鎖がしっかりつながっていると、ブレや迷いが少なくなります。これはセールスにおいてもそうですし、マーケティングの領域ではさらに顕著です。

 東京ディズニーランド(TDL)を例にとりましょう。非常に多くの面でお手本とされるTDLですが、そのコンセプトは「夢と魔法の王国」です。TDLではすべての活動が、このフレーズを実現するために検討され、実践されています。
夢と魔法の王国には、ゴミや吸い殻などは落ちていません。電気配線や配管などは、注意深く隠されています。そんなものは、夢の世界には存在しないからです。スタッフの出入りや資材の搬入なども同様で、来場者の視界から完璧に隠されています。

 個々のアトラクションとその配置、施設のデザインや配色、スタッフの教育、その他もれなくすべてのものが、「夢と魔法の王国」を実現するために存在している。これがTDLの戦略‥‥のほんの一部なのです。
そしてこの戦略に忠実であるために、TDLは常に高い価値を来場者に提供し、同時にブランドとしての価値も維持し続けることができるのです。

 日々の業務の中では、時に迷うこともあります。ですが「その先の目的」が明確であれば、迷うこともなくなります。それは同時にブランドとしての価値を高め、維持することにもつながっていくのです。

6.それぞれの位置関係を見直してみよう

マーケティングはセールス(営業)の上位階層にあり、マーケティングの目的を達成するための手段がセールスです。
この自然な位置関係にねじれがあると、目的と手段の連携までもがねじれた状態になってしまいます。これが悪い意味での「手段の目的化」で、こうなるとマーケティングとセールスの役割分担がうまくいかなくなってしまいます。実は、そうした企業は数多いのではないでしょうか。

 ですが、たとえそうした状態であったとしても、それが企業にとって致命的かというと、そうでもありません。それぞれの位置関係がねじれていても、業績が上がるということはもちろんあるでしょう。それゆえ、関係性のねじれに気付きにくいということもいえます。
ですがマーケティングとセールス、それぞれの役割と位置関係を知り、ポジショニングをきちんと整えたうえで目的と手段の階層を設定すれば、企業活動全般に一本の筋が通ります。
その筋に沿ってコミュニケーションプランを立て、セールス戦略を検討すれば、あらゆる活動が「上位階層の目的を達成する」というラインに収束します。TDLがすべての活動を「夢と魔法の王国」を実現するために行っているように、事業効率を飛躍的に高めることにも貢献するはずです。

 まずは、自社のマーケティングとセールスの関係性を見直してみましょう。そのうえで「上下階層」に注意しながら、ひとつながりの流れを作り上げてください。

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